第四部:無機化学の基礎 生活と無機(燃焼エネルギー)

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  ここでは,人類が利用する一次・二次エネルギーに関連し, 【エネルギーの現状】, 【エネルギーの利用状況】, 【エネルギーの形態変換】 に項目を分けて紹介する。

  エネルギーの現状

 人類は,エネルギーを利用することで発展してきた。人口増加,産業の発達により必要とするエネルギーは膨大な量に至っている。
 自然から採取され,変換・加工される前の物質を源とするエネルギーを一次エネルギー( primary energy )といい,一次エネルギーを変換・加工したものを二次エネルギー( secondary energy )という。

 一次エネルギー
 天然ガス( LNG : Liquefied natural gas ),石油,石炭などの化石エネルギー,水力,風力,地熱,太陽光などの自然エネルギーやバイオマス,原子力などがある。
 この中で,利用する以上の速度で自然界から補充されるエネルギーを再生可能エネルギー( Renewable energy )という。一般的には,太陽光,風力,波力・潮力,流水・潮汐,地熱,バイオマス等の自然の力で補充されるエネルギー資源により得られたエネルギーをいう。
 これに対し,ウランなどの地下資源,石油や天然ガスなどの化石燃料は,資源が有限のため,枯渇性資源,枯渇性エネルギー( exhaustible energy )などといわれる。

 二次エネルギー
 一次エネルギーを変換・加工した電力(電気),石油製品(ガソリン,軽油,LPG など),液化天然ガス( LNG )を原料とする都市ガス,熱供給(ごみ焼却熱や工場排熱)などがある。
 家庭用石油ガス( petroleum gas )の品質規格では,プロパン+プロビレン 80%以上とあるため,一般には,主成分の名称を用いて,プロパンガスと称されている。
 都市ガスは,天然ガス( natural gas )に石油ガスなどの石油製品を混合し,熱量の規格に合わせて調整したメタンを主成分とするガスである。

 【参考】
 LNG( Liquefied natural gas )
 メタンを主成分とする天然ガスを輸送・貯蔵を容易にするために液化した液化天然ガスである。
 LPG( liquefied petroleum gas )
 石油の精製により得られる石油ガスを,輸送・貯蔵のため液化した液化石油ガスである。石油ガスは,プロパン,プロピレン,ブタン,ブテン(ブチレン)などの混合物で,JIS K 2240 「液化石油ガス( LP ガス):Liquefied petroleum gases 」において,家庭用,業務用,工業用,自動車用の品質が規定されている。

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  エネルギーの利用状況

 経済産業省資源エネルギー庁総合エネルギー統計によると,下図に示すように,平成 30年度( 2018年度)の最終エネルギー消費(各種産業,家庭などで実際に消費されたエネルギー)は,13,124×1015 J で,2013年度に比較して 6.8%減少している。
 エネルギー消費の内訳は,家庭での消費が 14.0%で残りが産業での消費となる。産業別の内訳は,製造業 43.8%,運輸業 23.4%(旅客輸送 13.8%,貨物輸送 9.5%),第三次産業(小売業,サービス業など) 16.1%,農林水産業で 2.8%であった。

最終エネルギー消費の内訳

最終エネルギー消費の推移と内訳(2018年):エネルギーの単位 PJ (ペタジュール: 1015 J )
元図の出典:経済産業省資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」

 エネルギー源別では,石油が 47.5%(2013年 48.9%)と最も多く,次いで,電力 25.9%(2013年 25.3%),石炭 10.2%(2013年 11.3%),ガス(天然ガス,都市ガス)8.6%(2013年 8.1%),その他(蒸気エネルギー,再生可能エネルギー,未利用エネルギーなど)7.7%(2013年 7.4%)であった。
 最も多い石油は,採掘された原油を加工して得られる石油製品として利用されている。2018年度における内訳は,ガソリン 25.2%,軽油 23.2%,ボイラ( JIS ではボイラーではなく,ボイラと表記)の燃料などに用いられる重油 17.0%,化成品の原料などとして用いられるナフサ 8.4%,灯油 7.2%,ジェット燃料油 8.5%,LPG 2.8%,その他石油製品 10.5%である。

 なお,電力を得るためのエネルギー源について,【電力の歴史】で紹介するように,東日本大震災後に,原子力の代替電源として休止していた石油火力の活用が進むとともに,2015年からは原子力の復活があり,2018年度時点では,ガス 38.3%,石炭 31.6%,石油 7.0%,原子力 6.2%,水力 7.7%,太陽光 6.0%,風力 0.7%,地熱 0.2%,バイオマス 2.2%となっている。

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  エネルギーの形態変換

 一次エネルギーは,多くの場合に他のエネルギー形態に変換してから利用されている。

 位置・運動エネルギー ⇒ 電気エネルギー変換
 水力,風力,太陽光などの再生可能エネルギーは,これらの持つ位置エネルギーや運動エネルギーを直接利用(風車,温室)する例,運動エネルギーに変換(水車)する例もあるが,多くは電気エネルギーに変換して利用されている。

水力,太陽光,風力の利用

水力,太陽光,風力の利用
出典:中部電力水力発電, 奈良県水道局太陽光発電システム(2020年時点でページ削除), 国土交通省港湾空間における風力発電


 内部エネルギー ⇒ 熱エネルギー
 化石エネルギー(石油,ガス,石炭)や放射性物質などは,次に示す利用例のように,燃焼反応,核反応による内部エネルギー変化を熱として取り出し,そのの直接利用の他に,気体の状態変化を利用して運動エネルギー電気エネルギーに変換して利用している。
 熱の直接利用
 都市ガス,LPG ,灯油,軽油,A 重油の燃焼で,熱エネルギーに変換し調理,暖房,加熱に直接用いる場合,ボイラで水を加熱し,高温水蒸気に変換し暖房(集中暖房),温水供給に用いる。
 熱 ⇒ 運動エネルギー
 自動車,船舶,小型発電機などの内燃機関では,石油を加工した石油製品(ガソリン,軽油,A 重油)の燃焼(酸化反応)熱エネルギー → 気体の体積膨張 → ピストンの(上下)運動 → 運動エネルギーに変換し仕事をすることができる。

内燃機関のエネルギー変換

内燃機関のエネルギー変換例
出典:NEDOクリーンディーゼルエンジン


 熱 ⇒ 運動エネルギー ⇒ 電気エネルギー
 液化天然ガス( LNG )を用いる火力発電のボイラでは,天然ガスの燃焼(酸化反応)熱エネルギー → 燃焼ガスの膨張 → ガスタービンの回転 → 水の加熱 → 水蒸気の発生・膨張 → 蒸気タービンの回転 → 発電機回転 → 二次エネルギーの電気エネルギーへ変換する。
 C 重油(石油を加工した石油製品)や石炭を用いる火力発電のボイラでは,燃料の燃焼(酸化反応)熱エネルギー → 水の加熱 → 水蒸気の発生・膨張 → 蒸気タービンの回転 → 発電機回転 → 二次エネルギーの電気エネルギーへ変換する。
 原子力発電では,ウラン 235 の核反応(核分裂)熱エネルギー → 水の加熱 →水蒸気の発生・膨張 → タービン(モータ)の回転運動 → 二次エネルギーの電気エネルギーへ変換す。

火力発電の原理

火力発電の原理
出典:九州電力火力発電設備(2020年時点でページ削除)

火力発電と原子力発電の違い

火力発電と原子力発電の違い
出典:四国電力原子力発電(2020年時点でページ削除)

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